ダーツライブ3 開発秘話 ~プレイヤーに寄り添うマシンを目指して~

みなさんが普段遊んでいるダーツライブ3。
たくさんの機能が詰まったこのマシンには、開発者の熱い想いと緻密な計算が込められています。
ダーツライブ3の開発責任者である杉森さんに、開発秘話を伺いました。
プレイヤー目線から生まれた数々の革新、イメージを覆したマシンデザインの裏側まで、盛りだくさんな内容です。
ぜひ最後まで読んでみてください!
ダーツライブとの出会い
――ダーツライブ3の開発ではどのような役割を担われたのですか?
「 2016年よりセガからダーツライブに転籍し、入社後すぐにダーツライブ3の開発責任者を任されました。企画コンセプトから始め、マシン、ソフト、連動アプリの開発を多くのチームメンバーと協力しながら同時進行し、今では考えられない短期間で生産まで進め、2018年4月にローンチできました。」
プレイヤー視点から生まれた革新
――クリケットのマーク音を変更されたそうですが、どのような思いがあったのでしょうか?
「当時のダーツマシンにおいて、自分がプレイヤーとして、また企画者視点で気になっていたことが多くあり、その一つとしてクリケットのマーク音がありました。本来、高いスコアを出せた=気持ち良い、という感情を持たせたいのですが、従来のマーク音は、「ピーッ」という笛の音が耳に強く残りがちで、個人的にはスポーツで審判がファウルを指摘するイメージが強く、成功報酬としての気持ち良さに結びつきにくいと感じていました。」
♪ ダーツライブ2のクリケットマーク音
――新しいマーク音はどのように作られたのですか?
「ダーツライブ3では、サウンドの強化でウーハーをマシンに搭載することを決めていたこともあり、体に響くような低い音と気持ち良い高音がミックスされた音をポイントに制作しました。キーとなるサウンドの変更に躊躇する意見も多かったのですが、最終的に賛同を得られて、変更することにチャレンジさせていただきました。」
♪ ダーツライブ3のクリケットマーク音
「ブルの音はプレイヤーが戸惑わないようにするため、ダーツライブ2のものを踏襲しました。ただし、ダーツライブ2をベースにしながらも、マシンにウーハーを入れて音源システムを一新したので、ダーツライブ2の音をより気持ち良くしています。ダーツライブ2の音をベースにしているものの、エフェクトを追加しながら試作していき、最終的に今の音になりました。」
♪ ダーツライブ2のブル音
♪ ダーツライブ3のブル音
――ボイス機能の導入には反対意見もあったそうですね。
「PDCの試合を見て、レフリーが点数をコールする声が心地よく、プレイのテンポに好影響を与え、結果の把握にも繋がると感じていました。社内ではソフトダーツの文化に合わないという反対意見や、必要ない等、色々な意見がありましたが、コアなダーツファンに刺さる仕掛けになり、今後のバリエーションの展開も考えられると感じ、試作として一度トライさせてもらうことから始め、最終的に採用にまで至りました。」

――音と連動するLED表示についてのこだわりを教えてください。
「効果音やボイスもそうですが、マシンの仕掛けでプレイヤーの感情を揺さぶることができると考えていました。プレイヤーがテンポよく、気持ち良くプレイでき、かつプレイの邪魔にならずに、1投の楽しさを感じてもらえるよう、LEDの光り方、タイミング、ゲーム進行を音と連動させることにかなり気を使って作りました。」
自分のお気に入りのカラーに設定してみてはいかがでしょうか。

――矢のスピード表示機能という独特な機能がありますが、これはどこから着想を得たのですか?
「ダーツをスポーツとしてフィーチャーしたいと思っていたこともあり、画面の演出方法や、判定でのテクノロジーの応用が多く誕生していたこともあり、その一環で矢のスピード表示をする機能を付けました。これは、セガ時代にゴルフ事業の開発に関わっていたことがあり、ゴルフでは一般的なヘッドスピードやボールスピードを表示する機能を有していたことがヒントになっています。」
――新しい盤面のクリアLEDボードについて詳しく教えてください。
「自分自身プレイヤーとして盤面が見えにくく感じていて、光る盤面をもっと綺麗に表現したいと思っていました。そこで、セグメントが隣の光の影響を受けないように、くっきりと光るように改良し、同時にスパイダーとインブルの色を黒に変更することでメリハリがつきました。また、ダーツライブ2ではサイドの照明が盤面を照らしているため、特徴である盤面の光を打ち消していると感じましたので、ダーツライブ3ではサイドLEDの光り方を工夫しています。」
――タッチパネルを採用した理由は?
「以前のダーツライブマシンはボタンだけで操作が複雑でしたが、タッチパネルを導入して、操作が簡単に初心者でもわかりやすいように採用しました。ゲーム終了後の動きも、下のタッチパネルで行えるため、上を見て首が痛くならなくなりました(笑)。」
――ライブビューやフルビットセンサーについても教えてください。
「ライブビューはスポーツの中継映像をイメージしました。また、フルビットセンサーではさまざまなデータが取れたり、自動コークを可能にしたりと、と大きな革新となりました。ローンチ時点はスキルチェック、センターカウントアップというフルビットセンサーならではのゲームを用意しています。」
革新的なマシンデザイン
――マシンデザインのコンセプトについて教えてください。
「環境に溶け込むデザインを目指しました。今までダーツマシンが置かれてなかったところにも置けるような、いわゆるカフェや、美容室など洗練されたインテリア空間においても違和感のないものをコンセプトに制作しました。そういう空間では、ダーツライブ2のような黒い四角い箱は少し異物感、違和感があると感じていました。
――シルバーという色の選択にした理由があるということでしょうか?
「ヘアラインという細かい模様が入ったステンレスは、周りの景色を適度に反射しやすく、置いた場所の風景、周りの環境に溶け込みやすくなります。環境に溶け込むデザインがコンセプト、ということで、シルバーを採用しました。」
――デザインの開発過程について教えてください。
「スタイリッシュ、カッコよくしたいと思っていましたが、かっこいいは人それぞれ違うため、チーム内でかっこいいと思うものを共有し、それらを要素を追求して、スタイリッシュな感じに仕上げていきました。正面に立って、立ちやすい、構えやすいデザインになるようにも検討しました。下の扉の光のラインは、正面に立つためのガイド、まっすぐ腕が振りやすいようなデザインにしました。」



――セガのデザイナーとも協力されたそうですね。
「過去に一緒に仕事をしていたこともあり、インダストリアルデザインの経験豊富なセガのデザイナーにも協力してもらいました。それまでは、グラフィックデザイナーのみで考案した全く違うデザインがあったんですが、一旦インダストリアルデザインのプロに相談してやり直さない?と言う話になり、セガのデザイナーと一緒に相談しながら、どういう狙いでどういうものを作りたいかというコンセプトを重要視していきました。なんとなくかっこいいからで進めず、目的を明確にしました。」
――横がツートンカラーになっている理由は?
「一色だと、分厚く見えたり、圧迫感があったんです。それではスマートさに欠けるということで、ツートンカラーを採用し、軽く、薄く見えるようにしました。」
――スタンディングナビについても教えてください。
「ダーツのセットアップは大事、ということで、スタンディングナビは最初の段階で考えられていました。設置環境に左右されず、きちんとした位置に立てるよう、プレイする人が見やすい位置に配置されています。プレイヤーが気持ちよくプレイできることを考え、主張しすぎないようにバランスを取りました。」
開発の苦労と喜び
――制作段階で大変だったことは何でしょうか?
「かなり多くの機能に手を入れ、新しいことにチャレンジしていますが、マシンデザインにおいても、従来のイメージを大きく覆すデザインとなっており、これを製品化することの社内意思統一がかなり大変でした。デザインには意味、コンセプトが色々と含まれているので、自信を持っていたのですが、従来との変化が大きいと、反対意見もかなりありました。」
――最後に、杉森さんのお気に入りポイントを教えてください。
「マシンが意思をもっているかのような表現や演出で、プレイヤーを気持ちよくサポートするマシンであるという点です。」
――杉森さんありがとうございました!