突然ですが皆さん、こちらの映像をご覧ください!
すごい…ッ!
産業用のロボットがダーツを投げ、ズバッとボードの真ん中に決めています!
この映像は東海地方のテレビで流れているCMで、その地方のプロダーツプレイヤーたちの間でも話題になっています。
初めて見たときはびっくりしました。ダーツ友達の間でも話題にあがっていて、この前「クリケットをやらせてみたい!」と盛り上がりました。ぜひ一度戦ってみたいです。
微妙な調整が本当に凄いと思いました。実はダーツのプロになる前に、機械のメーカーで働いていたことがあるので作り手側の大変さが分かります。
ダーツのプロを唸らせるこのロボット。
「一体誰がどんな目的で作ったの?」
「ロボットの腕前は?」
「プロと対戦したら勝てるの?」
さまざまな「?」が頭の中をよぎります。
気になって夜も眠れない我々編集部は、このダーツロボットを制作した会社を調べ、取材に向かいました。
いざ訪問! ダーツロボットを作った会社へGO!
ダーツロボットを作ったのは、愛知県刈谷市にある豊電子工業。
最寄りの駅から住宅地エリアを抜けると、巨大な工場が姿を現します!
到着するやいなや、工場見学をさせていただくことに。
工場の中は…
おお~ッ!
たくさんのロボットが並んでいる光景は圧巻です!
ロボットってかっこいいですよね。童心に返って夢中で見ていました。
ところで…
ダーツロボットはどこだろう?
と思っていると、社長からお話を聞けるということで会議室へ案内されました。
こちらが、豊電子工業の盛田高史社長。
──こんにちは。豊電子工業さんってどんな会社ですか?
一言でいうと配電制御システムや、ロボットの設計から製造販売まで行っている会社になります。
──なぜあのような映像を作ったのでしょうか?
あの映像はリクルートを目的としたCMです。人の代わりにロボットが何かをするチャレンジを通して、私たちらしさを伝えられるかも、と思ったんです。「面白いCMを作っている会社なら、面白い仕事ができるのでは」と思ってもらえるCMを目指しました。
──なぜダーツだったんでしょうか?
最初はダーツ以外にもゴルフのスイングやバスケットボールのフリースローなどたくさん案があったんですよ。“かっこいい”をテーマにしていたので、たくさんの候補の中で一番かっこいいイメージだったのがダーツでした。
実際のプロジェクトについては私より現場の社員の方が詳しいので、エンジニアに話を聞いてみてください。
社長に促されるまま、我々は別の会議室に案内されました。
ダーツロボットのエンジニアに訊く
ダーツロボットの真相に迫るべく胸を躍らせ扉を開けると、そこには二人の人影が…。
今回話を聞かせてくれるエンジニアのお二人を紹介します。杉藤さん(左)と牧野さん(右)です。早速話を聞いていきましょう。
──ダーツの研究などはされましたか?
ひたすらYouTubeでダーツの大会の動画を見ました。ダーツがボードに刺さるまでの時間とボードまでの距離は分かっているのでまず矢速を計算しました。撮影することも考えてなるべく人が投げる速度と同じにしたかったんです。
ロボットの腕前はいかに?
──CMではセンタービット(ボードのど真ん中)に刺さっていましたが、真ん中に刺さる精度はどのくらいなんですか? もしかして百発百中だったり…?
百発百中だなんて全然そんなことはなかったですね(笑)。
──そうなんですか? ロボットは正確な動き繰り返すことができるからダーツに向いていると思っていたので意外です!
もちろんロボットは正確な動きを繰り返しできるのですが、今回は“投げる”という動作がポイントで、そこがロボット業界的にはユニークな開発になっているんですよ。
──ほうほう…。というと?
産業ロボットは、投げるという動作は、普通しないものなんです。基本は“掴む・離す”。お客様の大事な製品を投げるというわけにはいきませんから(笑)。
──そりゃそうだ。
ダーツを掴む瞬間に角度や位置が微妙にズレます。そして離したあとは空気抵抗が加わるので、毎回飛び方が変わってきちゃうんです。単純な再現性でいえばロボットの圧勝ですが、微妙な調整は人間の方が優れてます。
あ、でもブルには何度も刺さっていたんですよ。
──そうなんですか!
正確に測定してないので感覚的な話になってしまいますが、調整前でブルには10%くらいの確率で入っていました。最終的にはもっと高確率で入っていましたね。
──精度が上がれば、人間といい勝負ができるかもしれませんね。
カメラを搭載したりAIを積んだり、改良すればプロにだって勝てる可能性はありそうですね。ぜひチャレンジしたいです!
──最後にダーツロボットを実際に見たいのですが
…。
実はもう解体しちゃいまして…。
──嘘ですよね…?
すみません…。CM撮影のためだけに組み立てたものでして…(苦笑)。
──そんなぁ…。
取材を終えて
ダーツロボット動画の裏側を知ることができた今回のインタビュー、いかがだったでしょうか。残念ながら、ダーツロボットの実物は見れませんでしたが、将来はダーツロボットとプロとの対決という可能性を感じることができました。
今回のインタビューを通じ、現代科学の進歩を感じると同時に、人間の能力の凄さを改めて実感できました。ダーツって、いや人間って奥が深い…。
豊電子工場のYouTubeチャンネルには、今回紹介したCMのメイキング映像も公開されています。
豊電子工業さんには『改良したロボットでプロと対決』なんていう第二弾CMを期待しちゃいます。
それでは、また!