日本で2人だけ? ダーツの審判「コーラー」の職業に迫る

「ダーツって審判がいるの?」と思う人が多いと思います。
ダーツマシンが点数を自動で計算してくれて、勝ち負けも表示してくれると審判なんかいらないんじゃ…と思ってしまうかもしれません。
でもハードダーツの大会ではダーツマシンではなく麻でできたボードを使うので、機械的な機能がなく、審判が必要不可欠なんです。ちなみにDARTSLIVE3にはVOICE機能があり、世界大会で活躍するコーラーの1人でもあるラス・ブレイ氏や、ジョージ・ノーブル氏の声を選択して、得点や残りの点数を読み上げてもらえます。
今回はそんなコーラーというお仕事について、日本で2人しかいないPDC Asia公認コーラーの1人、小野口漢(オノグチ カン)さんにお話しを聞いてきました!


そもそもコーラーってどんな存在?

ー コーラーってどのような存在なのか教えてください!

ダーツの審判です。点数を読み上げるのが一番目立つ仕事ですが、試合全体をコントロールするのがコーラーの本当の仕事なんです。

ー 具体的にどのようなことをするんでしょうか。

こまごまとしたことはたくさんあるんですが、選手の点数を読み上げる以外ですと大きく2つですかね。
1つ目は、ルールを選手が守っているかの確認です。“肘より上から投げなければならない”“3本投げ終えるまではラインを踏み越えてはいけない”などさまざまなルールがあるんです。それを選手がちゃんと守っているかを監視する役目があります。
2つ目は観客のコントロールです。これは意外かもしれません。試合でヒートアップしすぎた観客をクールダウンさせるため、マイクを使って会場にアナウンスをします。これもコーラーの立派な仕事なんです。

ー 試合ではやることがたくさんなんですね。コーラーについてなんとなく分かってきたところで、実際にコールをやってもらいました。

おぉ…さすが迫力のある声!このシンプルな動作の中で様々なことを意識してるんですね。ここからは小野口さんがコーラーになろうと思ったきっかけを聞いていきたいと思います。


なぜコーラーになろうと思ったのか

ー 小野口さんがコーラーになろうとしたきっかけは何だったのでしょうか。

もともとハードダーツのハウストーナメントに出ていたんですが、そこでコーラーをやられていた方がお休みをしてしまった際に代打でやったことが始まりです。私が英語を喋れることは周りに知られていたので「試しにやってみてよ」と言われチャレンジしました。最初はめちゃめちゃ失敗してコーラーの難しさを感じましたね(笑)。
現在レーティングは10くらいで1度は13まで上がったこともあったんですけど、誰もがダーツプロになれるわけではないですよね。なので、自分だったらこのダーツが好きな気持ちをどのようにダーツ界に還元できるかなと思って、「コーラーならできるのでは?」という結論にたどり着きました。
そんなときにPDC Asiaでコーラー試験があるというのを聞いて、周りからも「受けてみては?」と言われていたのでコーラーになることを意識し始めましたね。

ー もともと英語が喋れるということですが、語学の勉強をかなりされていたのですか?

父の影響で幼いころから海外を転々としていたんです。幼少期から高校生まではイギリス、インドネシア、アメリカなどで暮らしていました。大学は早稲田の英語英文学科で英語の先生になろうと勉強していました。ちなみにTOEICは990点です!


コーラーになるまでの道のり

ー コーラー試験に向けてどのような勉強や苦労をされていたのでしょうか。

自分は計算が全然ダメで、3投合計点を暗算できなかったんです。なので、ひたすら合計点数の暗記を特訓しました。イギリスのダーツ団体であるBDOのコーラーの方とお話をする機会があったんですが、その方にいろいろアドバイスをもらいました。「20,19,18周りの点数は全部暗記してすぐ言えるように」という教えをもらい、さらにそれを暗記をしたうえで「試合の動画をいっぱい見なさい」「点数をコールすることをまず習慣づけなさい」と教えてもらいました。なので、その教えを守るべくトーナメントでコーラーをやり続けながら、暗記をひたすらしていましたね。

ー 試験はどのように行われるのですか。

私は台北で行われたPDC Asiaの大会で試験を受けました。試験内容は実際の大会のベスト32くらいの試合でチョーカーをします。ちなみにチョーカーとは点数を記録する係です。自分のときは小野恵太選手の試合でした。選手は賞金のかかった試合なので本気ですし、後ろではラス・ブレイ(以下:ラス)やPDCの関係者が立って見ているので緊張ですよね(笑)。
ご縁があったPDCの選手からも「漢くんならいけるよ」と言われていたので自信はありましたが、その反面めちゃめちゃ緊張しました。その試合はノーミスで終えることができて、ラスからも「パーフェクトだ!」と言われました。
次は準決勝です。テレビの中継も入りマイクを持って、大きなステージで試験が行われます。
その試験を終えた際、本場PDCのようだったとラスからもお墨付きをもらい、とてもうれしかったですね。
PDCではコーラー試験とチョーカー試験があって、コーラー試験にはチョーカーの試験も含まれています。なので、先にチョーカーの試験を行い、合格したらコーラーの試験に移るという形なんです。
でも、自分の場合はやる順番が逆で決勝戦でチョーカーをやったんですが、無事に合格をいただき晴れてコーラーになれました。

コーラーの試験が行われる舞台のイメージ図)


本業との両立

ー 平日は普通に会社員として働いている小野口さん、本業とはどのように両立しているんですか?

私の職場は土日が完全に休みなので、PDC Asiaのスケジュールが決まった段階で先に試合前後の金曜と月曜で有給を取れるように押さえておくという感じです。
コーラーを始めてから2年経ってないですけどそのような調整でやっていけてます。会社には表立ってコーラーのことは言っていませんが、周りの社員はSNSを通して私がダーツで世界を飛び回っていることは知っていると思います。
うちは有給消化目標率というのがありまして…どうしても有給を使わなくてはいけないんです。それだったらPDC Asiaに合わせて取れば私としても会社としてもWin-Winじゃないですか(笑)

ー コーラーとして海外に行かれる際のスケジュールなど教えていただけますか?

試合前日の金曜日に日本を飛び立ち、大会開催国へ降り立ちます。どうしても仕事が休めないときは金曜の深夜便で行き、試合当日の朝に到着後、そのまま会場に向かうなんてこともたまにあります(笑)。コーラーでもありますがスタッフも兼ねているので朝9時には会場に着いていないといけないんです。選手の呼び出しなども行っているんですよ。コーラーとしての仕事は準決勝から先で、時間で言うと16時ごろからですかね? 決勝戦はラスがコーラーを務めるのでチョーカーをやることになります。ただ準決勝と決勝で3回しかチャンスが無く他にもコーラーはいるので、コーラーの仕事をできないこともあるんです。私はラスから“VOICE OF ASIA”のニックネームをつけてもらうなど、ある程度の評価をいただけているため、準決勝のコーラーは必ず任されています!

ー 最後にコーラーとして目標や夢はありますか?

夢はPDCの専属コーラーになることですね。しかし現実は厳しそうです。PDCのワールドツアーをアジア圏で開催する際は私にコーラーをやせてくれるとラスに言われていますが、そのためには実力が足らないのでまずスキルを磨きぬいてチャンスを待ちたいと思います。アジアナンバーワンコーラーの座は絶対保持しておかないと、そのチャンスも来ないと思うので日々精進です。なので、現実的な目標だとPDCの舞台で1回でもコールをすることかなという感じで考えています。

ー 小野口さん、ありがとうございました!


まとめ

会社員とコーラーという二足の草鞋を履く小野口さんのリアルな話を聞けて、よりコーラーという存在が身近に感じた方も少なくないのではないでしょうか。 これを機にPDCなど海外の大会を観戦してみるのもいいかもしれません。新しい視点でダーツを楽しめそう!
また、DARTSLIVE3のVOICE機能もぜひこの機会に使ってください。 小野口さんの声がDARTSLIVE3から聞こえてくる日もそう遠くない…かも?

 

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